真っ白い風呂敷を解いて 折畳んだまま
白木の箱を前に 誰一人開けようともしない
よく見ると
銀糸で無数の人の顔が
幾何学模様に織り込まれている
ホールいっぱい 老人ばかり よく集まったものだ
なんだ みんな派手なカッコして ジジババのくせに
敬虔な顔をして じっと演壇の方を見つめている
妙に 仙人ずらした老人 誰なんだ あいつは
演壇に上って 何を始めようっていうんだ
気持ちわるい 真っ赤な眼
見開いて 演台をぶって なにやら大声でしゃべっているようだが
声も音も伝わってこない
周りの者の表情は 豹変して 熱気に溢れている
だのに おれにだけは ちっとも 伝わってこない
なんで おれが こんな所いるのか まるで解からない
が ともかく 終わったようだ
・・・あら あなた 信心がたりないみたいだわねえ ほほほほほ
えっ こ こんな 美 美人がおれの隣に座っていたなんて
わっ 若い みんな みんな 若い
いつの間にか おれより 遙かに若くなっている
だが 妙に 悲しい姿だ
みんなあの箱を あの白い風呂敷に包んで 首にかけ
まるで 遺骨でも抱くかのようにして
ホールから 出ていこうとしている
守 山 幹 雄 (もりやまみきお) の 詩 [メ ニ ュ ー] |
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