いた

 

 

確かに いた

私は 言葉のない 世界に

確かに いた

風がふいて 磯の香する

寂れた
 街だった 

看板の文字 

一文字 読めば

前の 一文字が 消えてゆく

記憶が出来ない
 
短い看板の文字すら 読みきれない

意味がとれない

それでも 私はいた

確かに いた

人間として 存在していた

夢の中で 私は生存していたのか

それとも

覚醒した私が 夢の中の私を

蘇生させたのか

ともかく 私は

磯の香する街を

人間らしく

大手を振って 歩いていた

 

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