行列と擦れ違う。話声一つしない。何の行列だか皆目見当がつかない。
やたら長い。枯葉を踏む足音だけが、静謐から湧き上がってくる。
老若男女一様に黒い服を纏っていて、
めいめいが大事そうに一本づつ白っぽい茸を抱えている。
茸には何か文字が書かれている・・・□□□義士?・・・赤穂浪士の行列?
まさか。いや、□□□居士?いやいや、□□□蟻□??・・・
薄暗いうえ木漏れ日が乱反射してはっきり読みとれない。
横目。流し目。上目遣い・・・
すねたような、ふてくされたようなどことなく割り切れない目つきだ。
みんな何処かで見たような顔だが、誰だと解る顔は一つもない。
行列が通り過ぎた後、ひそひそ囁いているのが聞こえてきた。
・ ・・あいつだ。
あいつは生を貪るだけ貪って、死は振り返ろうともしない。
行列が遠ざかれば遠ざかるほど、声が大きく聞こえてくる。
・ ・・あいつのせいだ。この道が茸で塞がるのも、もう時間の問題さ。
ウスバカ ゲロウ ・・・。
・ ・・しーーっ。聞こえるわよ。
あいつは、地獄耳なんだから。蟻地獄の主なのよ。
・ ・・聞こえたっていいさ。
もう、あいつとは同じ世界に住んでいるわけではないんから。
あいつは自分だけがいい子になって、
この茸の街道を空から眺めるつもりだぜ。
自慢の薄絹を着て大空を飛び回る夢を見てるんだ。 きっと。
いい気なものさ。薄羽蜻蛉だって。笑わせるぜ。
ウスバカ ゲロウめが・・・。
薄羽蜻蛉=ウスバカゲロウ??
蟻地獄=アリジゴク??・・・
俺は驚いて後ずさりしてみたが、もうそこには誰一人いる気配はなく、
ただ、夥しい数のあの白い茸がまるで墓石のように並んでいた。
そして、どこからとなく、子供達の囃したてる声が聞こえてくる。
グルグルモンジ グルモンジ
輪廻転生 グルモンジ
早うおきて 茶わかせ
あしたの法事によぼうのう
ああ、よせ!! 止めてくれ!!
・・・落ち葉が舞い上がる。土を掻き分ける。
俺の全身は、パワーショベル、いやドリル??
・・・めり込んで行く。もう止まらない。
子供達の歌に合わせて、もう、俺はここに墓穴を掘っていくしかないのか。
グルグルモンジ グルモンジ 輪廻転生 グルモンジ・・・。