案山子さんと雪達磨くん

 

 

 


 今晩は、埼玉の雪達磨君。今晩は、案山子さん。寒いねえ。ホント、寒いわねえ。岡山も風邪

流行ってて、おざささんもついにひいちゃったのよ。そう・・・。ゆうこさんはだいじょうぶなの?。

大丈夫だよ。風邪なんかひいてられないよ、この忙しいときに。そうだよね、確定申告、税務相

談じゃあね。そうだよ、僕はゆうこさんに創ってもらったんだから。そうなの、ゆうこさん元気

だわね、冷たい雪を手でこねて作ってくれたのね。そう、有り難い話だよ。半分はゆうこさん、

ストレス解消の為に僕を創ったんだけどね。眼はバレンタインの残りものの義理チョコを固めて

作ってくれたんだ。あら、そう。おざささん羨ましがるわよ。その話、聞くと。すさまじかった

んだから。

 あの日、女の子がハート形の手作りチョコレートをもって、おざささんちに来たの。でも、生

憎、ひろき君がいなくて、弟のゆうき君が受け取ったの。でも、女の子の名前を聞くのを忘れち

ゃった。塾から帰ってきたひろき君は、そんなモノには目もくれずに、ドラエモンのテレビに夢

中。そこへ、おざささんが帰ってきて、それを見つけるやいなや、ハートをベギベギに割って、

みんなに配って食べちゃった、てわけ。おざささんが一番おいしそうに食べていたわ。それにし

ても、息子が貰ったチョコレートを貪り喰う親がいるかねえ。大目にみてあげてよ、甘党なんだ

から。可哀想なチョコレー、いや、ハート。誰の?決まってるじゃない。おざささんの?・・・

まさか。

 ところで、おざささん、ホントに親バカなんだよ。こないだ、子供のマラソン大会があったの。

兄(5年生)も弟(3年生)もクラスで2番。でも、兄は学年では4番、5.6年生では12番だった

の。そこへいくと弟は速かったわ。学年でも2番、3.4年生でも2番。ハナの差で負けたんだ。

ホントに惜しかった、っておざささん悔しがってたわ。でも、内心とても嬉しかったのよ。だっ

て精一杯頑張ったんだもの。明日は、父親参観日に行くみたいよ。

 あのう、案山子さん、君は誰が作ってくれたんだい?おざささん?おざささんはそんなに器用

じゃないわ。それに、そんなに残酷でも・・。残酷?そう、この口見てよ。そう言えば・・・。

おざささんちの隣に住んでる桜子ちゃんよ。私、案山子にされる前は桜子ちゃんのお気に入りの

お人形だったの。何をするときも、私を負ぶったり抱っこしてくれていたの。ミルクも飲ませて

くれていたわ。でも、大きくなるにつれて・・・。私、長い間、倉庫で眠っていたの。「これこ

れ、お父さん、見つけたわ。これがちょうどいいわよ。」ニコニコしながら私を拾い上げて、埃

をはらってくれたわ。長い間見なかったけど、桜子ちゃんすごい美人になっていた。私、ホント

に嬉しかった。聞くところによると、ミス桜泉になっちゃてるみたい。桜泉?お酒のメーカーよ。

でも、桜子ちゃん、私を十字架の板に釘で打ち付けて、お父さんに渡してしまったの。そう・・

それで、田圃の真ん中にたてられて、カラスも怖がるような口裂け女にされたというわけかよ。

君ってホントに可哀想だね。でも、春を待っているの。春になればきっと桜子ちゃんの目も醒め

るわ。そうすれば、きっと昔みたいに・・。きっと、きっと・・・。

 春だって、とんでもない。そんなことになれば、僕は溶けちゃうじゃないかよ。しかた無いわ

よ。snowman is mortal って言うでしょう。それを言うなら man is mortal だろう。似たよ

うなものよ。君ってずいぶん冷たいんだな。冷たいのはあなたよ、だって、雪で出来てるんでし

ょう。躰は冷たくても、心は人一倍温かいんだぞ。もし、僕が溶けたら、お風呂のお湯になって、

ゆうこさんの躰を温めてあげるんだ。まあ、エッチ、ゆうこさんのおっぱいとかをコチョコチョ

する気でしょう・・おざささん、羨ましがるわよ。バカ、そんなんじゃないんだ。僕は来世の事

を本気で考えているんだ。雪達磨の僕が、生まれ変わってお風呂のお湯になったとしても、その

時、既に前世の記憶を失っている。嘗てゆうこさんが僕を作ってくれたという記憶がなければ、

ゆうこさんのお尻をコチョコチョ・・。やっぱり、エッチ。違うんだ、つまり、そのう、僕が言

いたいのは、前世の記憶が無ければ、生まれ変わったとしても意味がない。全く面白くないと言

うことなんだ。

 そんなこと言ったて仕方無いわよ。春は必ず来るんだから。それに、みんな春を待っているん

だもの。ゆうこさんも、おざささんも。ゆうこさんは太陽の光に憧れているし、おざささんは、

長い悪夢の恐怖に脅え、思い出すのもおぞましいということで、雪女「お雪」の夢はつづきを見

るの、やめちゃったのよ。
 
 春を待ちましょう。案山子さんも雪達磨さんもゆうこさんもおざささんも、幸せを運んでくる

春を、ただひたすら待ちましょう。
 
 では、また、春に・・・。

 

 

 

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