雪のように淡い紫陽花の花びらが 月に舞い上がっていく
三叉路を鋭角に突っきると
狐花が焚き火のように燃え盛っていて
輪の中に 暖かく僕を迎え入れてくれた
揺れる灯りに映し出される顔は
懐かしさに溺れてしまって 誰だか思い出すことができない
言葉はこだまして聞き取れないが 何故かみんな解ってしまう
だだっ広い丘の上に 磯の香が蛍のように漂ってきた
僕は赤い爪の蟹の跡を追っかけてゆくのだが
決して急ぐことはない
ちぎれながらもどこまでも続く あのにび色の雲のように
大山を臨んで
先ずは 一つ 大きく息を吸い込もう