眼光鋭い画家の自画像のような
古い石造りの建物が
闇に ほの白く浮かんでいる
三階の小さな窓の一つから
漸く緑色とわかる 暗い光が漏れ
それとなく案内する
俺は何かの密売人なのだろうか
部屋には 長い首を持つ女が一人 椅子にかけ
灰色の二本指の上に顎を乗せ 亜麻色の髪を靡かせて
まんじりともせず 限りなく遠くを眺めている
まるで部屋の中に海でもあるかのようだ
白い鴎になって 唇に紅をさし
ひたすら 夫の帰りを待ちわびているのだろう
女が俺になど気付くわけも無いが
この部屋の中になら
どこかに
青空を見つけることだって 出来るかもしれない
それを切り売りして 暮らしをたててゆこう