花火の影 小夜

 

 

"この人 誰?"

実家の縁側で見る 昔のアルバム

"小夜ちゃん びっくりしたんだろう そっくりだものな"

"誰と?? お母さん この人 誰と似てるのかしら"

"綺麗な子ね  お父さん 昔はもてたんだものね"

"ふ〜〜ん でも 誰に似てるのかしら ねえ 誰? 誰よ??"

"誰って 小夜ちゃんに決まってるじゃないか"

"小夜ねえ ほほほ 小夜ちゃんって こんなに美人かしらね"

"まあ 失礼 全然似てないけど 美人っていう意味じゃあ同じってわけか 私と"

何度 目を凝らして見ても あの小夜と ここにいる小夜とは瓜二つだ

何故 香世も小夜も似てないって言うのだ? ほんとに似てないのか

ほんとは似ていないのだろうか??

美しく 儚く 謎めいた 花火が

小夜と 香世と 私の大空に

絶間なく 打上げられていく

もしかしたら

小夜は 私だけの暗い海に落ちてゆく

花火の影なのかも知れない

無秩序に並んだ 無数の波の鏡に乱射した

音を失った花火の 影なのかもしれない

無意識に 私は影を拾い集め

その影を 香世にひき摺らせ

香世がひき摺った影に 小夜を産ませた

過去 現在 未来 現在 未来 過去 未来 過去 現在

影 香世 小夜 香世 小夜 影 小夜 影 香世

花火を映す ランダムな海の輝きは

誰も見ない 私だけの揺れる鏡は

ただ 哀しく

海の 暗さと 冷たさだけを 唄っている

 

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