小夜と七夕

 

 

天の川に流されて

梅雨空から落ちてきた

ベガとアルタイルのように

私達はどしゃ降りの雨の下

ただ やみくもに 抱合い愛撫した

雷鳴がやんだ後に 残ったものは

ずぶ濡れの体と 何も見えない未来だけだった

七夕の日のあの場所 それが この境内だった

そして 今 ここに居るのは あの小夜ではなく

私の愛娘の小夜だ

実の娘でありながら 同じ名前

(私がつけたのだ 後悔しても始まらないのは承知だ)

しかも 娘小夜は いつの間にか

あの小夜と 瓜二つに 成長している

私は DNAなど 信じない 

いやでも 生まれ変わりを 信じさせられてしまう

娘小夜が 桜木小夜の生まれかわりだとしたら

小夜は 前世のことを憶えているのだろうか

土曜夜市の帰りに この境内に誘ったのは

私ではなく 娘の方だ

偶然か 前世の潜在意識がそうさせたのか

それとも 何もかも知っているのか

憶えていて 私をここに誘ったのか

私は そ知らぬふりをして 賽銭箱に小銭を投げ 柏手をうつ

"お父さん 何をお祈りしたの"

"小夜ちゃんが、好きな人のところにお嫁に行けるようにさ"

"おとうさんったら 私 お嫁になんか行かないわ"

星が流れて 一瞬 小夜の瞳を輝かせた

 

 

TOP