思春期の小夜

 

 

香世に向かって 手当たり次第 物を投げつけ

手足をひきつらせて 私を 涙の横目で睨む

あのおとなしい小夜が 豹変したのは あの日

香世と私の結婚15周年記念を迎えた日

小夜を寝かしつけて (いや 眠っていると思っていたのだ)

二人で食事に出かけた あの祝いの夜が最初だった

香世が 諌めれば 諌めるほど

小夜の顔は蒼ざめ 四肢を枯木のようにひきつらせる

思わず
私は 弓なりになった小夜の体を抱きしめ

優しく手足をさすってやる

そして あの左手

痣も無く 膨らみもない 

抜けるように白い 手首に 口づけする



小夜は 嘘のように 安らいだ顔になり

そのまま 眠りこけてしまう

あどけない寝顔に 私は 自らの罪悪を見せつけられないではいられない

凍結していた私の潜在意識が 解け崩れ 血液となって

自らの意識の体内を 撹乱しつつあることの罪を

小夜を抱擁したときに感じる 胸のふくらみ

あの弾力は もはや 愛娘のものではない

遠い昔の けれども 現実味あふれる 

懐かしい 青春の感触だ 

香世の視線に私の全身がわななく

すると
 小夜の左の乳房が ぴくりと動いて

私にだけ聞こえる声で 叫んだ

""お願い 私を一人にしないで そのまま じっと抱いてて!!""

 

 

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