髪の毛は岩海苔のようにしがみついている
親父は齢70にして奥歯が生えた 親知らずだ
呆けることもなく背筋もぴんと張っている
不肖の息子には愛想を尽かせても孫だけは無性に可愛いらしい
眼鏡なしで新聞を読んで聞かせている
勲章は隔世遺伝するものと固く信じているようだ
傘寿は過ぎた 次は米寿
不肖の息子の息子が不肖なら
親父にとっては自慢の孫になるのかもしれない
親父も俺もお互い見切りをつけるのはまだ早いのではないか
[2002年作]