図書館のガラス窓を 鳥の影が 虫のように這った
文字は 和紙のちぎり絵で出来た 蒼い山に飛んでゆき
和菓子のような花をつけた 梅の木を 一本見つけてきた
三ぶ咲きの木の 根元近くの苔むした幹に 寄生した雑草の緑が やけに鮮やかだ
名も無い虫が 白い帳の住処を造っている 小さなうろ
枝はみんな 指を精一杯ひろげて その手を天にかざして
蕾のために 紅い香を祈っている
老木から落ちる 文字の雫で 喉を潤すと
鳥は 一声鳴いて 雨上がりの空へ消えて行った