ぼくが目指していたのは あそこだった
一度行った記憶を辿って
落葉松の林を潜り抜けて行く
開けた視界にはだだっ広い苅田
使い古された人形が案山子にされている
そばに 一輪の紅い花
湿った羊歯の葉を踏みしめて
もの言わぬ葬列と擦違い
あり地獄のような山肌をよじり登って
辿り着いたところに
大きな一枚岩がある
そこで ただ 海を見るんだ
真っ青な鏡の海でも 夕焼けの漣でも 黒い荒波でも
ぼくは きっと そこでなら涙が流せるだろう