残像

                                  小笹二十志 作



目を瞑ればはっきりと見える

おはようの笑顔

スカートの裾をふんづけられて怒ってる顔

先生にあてられて困ってる顔

トイレに行きたいのに我慢してる顔

びっくりした後にする照れ隠しの笑い

僕と目が合ったときにする一瞬の戸惑った表情

この闇の中にはっきりと見える不思議

いつでも会えるようにと描こうとしても

目を開けば三次元の光にかき消されてしまう

僕は今日も闇夜の絨毯をいそいそとまるめて

紫外線の届かない心の奥底にしまいこむ


目を開ければまぶしい光に閉ざされた

聞こえないおはようの笑顔

スカートの裾がふんづけられてる悲鳴

先生にあてられても嘘を平気で答えている

授業中につれしょんするあつかましさ

なにか失敗した後には長いベロ

僕と目が合ったときにする一瞬の戸惑った表情

それだけがこの光の中でもはっきりと見える不思議

今も会ってるのに何かを話そうとしても

目を閉じなければ何も浮かばないじれったさ

君は今日も光の花びらを氷イチゴのよう溶かせて

ぼくの視界から眩しく消えてゆこうとしている



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