一枚のガラス戸

 

 

孔雀の羽を思わせる一筋の雲から

銀杏の葉が日に照らされて

ハラハラと舞っている

その下で仏様が眩しそうに微笑んでおられる

保養園の建物は満ち足りた安らかな老人の顔に似て

取り巻く樹々はその一本一本が平和で満ち足りた表情に溢れている

此処では一枚のガラス戸のおかげで車椅子の軋みも聞こえなければ

意味の無い数字が並ぶカレンダーに心乱されることも無い

ただ一枚のガラス戸  内と外

この恨めしい透明な 一枚のガラス戸

 

 

 

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