霞か 雲か 霧か
いつも 何かに押し殺されていた
あいつの無表情は
もの哀しく 静かに
彫像のように ただ 在った
この暗い 斑な空模様にこそ
あの地を裂くような鮮烈な
叫喚 轟音が 潜んでいるように
僕はあいつの横顔に 時々 閃光が走るのを知っていた
煮えたぎる情熱を見ていた
だが 今 僕は
発せられることもなく滅したものが何だったのか
それは 何処へ消失したのか
この蒸し暑く連綿と続く読経のどこに
それを読み取ればよいのだろう
果たして
発せられることさえなかったものが 滅することができるのだろうか