香りがないんですもの すぐわかるわ 造花だってこと

 

 

嘗て 僕は あの風景の中にいて

うしおの香りと 太陽の眼差しのもと 

焼けた砂を踏みつける裸足で

海辺の膚をまさぐっていた

一粒 一粒の 砂でさえ

花を抱いて 力強く 生きていた

それなのに

いま 

僕は 

幾重にも 閉ざされた ガラス窓の内側から

造花の風景を 眺めさせられている

 

 

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