フリードリヒ・シュレーゲル(1772〜1829)[ロマン派文学論(断片116)]
シュレーゲルは狭義の詩論ではなく、全ての文学ジャンルの総合を目指していた。
一編の作品の全ての輪郭が鋭く限界付けられ、しかもその限界がなく無尽蔵に豊か
であるならば、そしてみずからにこのうえなく忠実で・・・しかもみずからをはる
かに超えているならば、そのときその作品は完成している
一編の作品は常にその内部にその作品自体に対する批評を内蔵し、自己を相対化し
続けなければならない。そのことによって一編の作品は、つまり一編の詩は、みず
からを超越する。
ロマン主義文学は、発展的普遍的文学である。永遠に生成し続けていて決して完成
することがありえないというのが、ロマン主義文学に固有の性質なのである。した
がっていかなる理論によっても分析し尽くすことはできない。予見的批評のみが、
その理想型の特性描写をあえて企てることを許されるであろう。
芸術のさまざまな形式をあらゆる種類の緊密な形成素材によって満たし、フモール
のはばたきによって生動せしめんとするものである。
いかなる実在的関心にも理念的関心にもとらわれず、文学的反省の翼にのって、描
写された対象と描写する主体との中間に漂い、この反省を次々に累乗して合わせ鏡
のなかに並ぶ無限の像のように重ねてゆくことができる。
ロマン主義文学は、もっとも高度にしてもっとも多様な形成を可能ならしめる。し
かも、単に内から外へ向かってのみならず、外部から内へ向かってもである。
作品はそれぞれにひとつのまとまった全体でなければならないのであるが、そのひ
とつひとつのあらゆる部分は、同じように有機的に組織され、そのことによってロ
マン主義文学には、限りなく展開してゆく古典性への眺望が開かれる。