ピエール・ジャン・ジューブ(1887〜1976)[鏡の中]
詩は唯名論的能力を有してはいるが、詩の意味には常にある種の神秘が付き纏う。
詩人であれば規律に尽くすべき義務がある。
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唯名論・・・中世スコラ哲学の普遍論争における考え方の一。
概念的思惟の対象たる普遍を個物に先立つ実在とみる実念論に対して、
個物こそが実在であり普遍とは単に物のあとにある名称にすぎないとする。
近世哲学の先駆となる。代表者はオッカムなど。ノミナリズム。名目論。
恋愛同様詩もまた秘められたタブーに従うものである。
詩は稀にしか存在しない。詩は言語の高いレベルの表現である。
記憶の果実たるイマージュによって潜在的な世界全体を、宇宙をその腕に抱きつつーーー詩
は語という、複雑な意味を既に担い、実際に存在するもののうちの不確かな量に触れる記号、
この上に成り立っているのだ。
詩は、物を創りだすという語の持つ不可思議な能力の上に成り立っているのだ。
創造と神秘とが詩の宝をなすのである。
詩は意味の有機体と考えなければならない。
一つの詩を他の詩に還元することは不可能だが、すべての詩が驚くべき程似通った或る共通の
領域に達していることも事実である。
詩句の技巧は厳密な意味で識別不能である。「詩法」とは規律である。
韻律法の諸規則は時代時代の一時的な手法、一国の言語にしか関わらぬ道標しか表してはいない。
創造、神秘、美、そして大地に根を下ろすことだ。