逡 巡

 

 

あの日の土壁の臭いに絡みつく蔓草

 

自己嫌悪の筍が突き上げる街道を

 

ハイヒールが駆抜けてゆく

 

蜘蛛の巣の闇がかぶさっても

 

振り払うことさえできない

 

季節はずれの桜が

 

鉛のように咲かせた沈黙の満開を

 

痙攣した梢に担がせている

 

翻弄される君は

 

瞼の隙間から覗き込んでいる僕の影を 

 

虚ろなスクリーンに貼付けて

 

肩をすぼめて泣いている

 

 後姿は振向くことを許さないらしい



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