白い彼岸花

 

 

 

すまなかった

 

きみに こんな寒さを味わわせるために

 

部屋を 温めてきたわけじゃなかったんだ

 

この素晴らしい 幾何学模様の上で 死んでいける者は

 

きみ以外に もう 誰もいない

 

望んで 産み出された光景でなくとも

 

現に きみは この美しい死の模様の 一部になってしまっている

 

今更 どうすることもできない

 

氷に閉じこめられた ひとかけらの死の結晶に 名前をつけたからって

 

それが いったい 何になる

 

幻想以外には 何も産まなかった

 

この淡く柔らかな赤紫のホログラムが全てなのだ

 

万華鏡のスポットライトを浴びてしか

 

生きることは できなかったんだ きみは

 

 

暖房に寒さだけが炙り出された部屋で

 

蒸気になって震えている白い彼岸花の落とした影の下

 

無言の叫びが 過去の埃を蹴たてて 赤紫に靡いている

 

 

2003.1.11

TOP